荷待ち時間 / 荷役等時間
読み方:にまちじかん/にやくとうじかん
荷待ち時間とは、トラックドライバーが集貨・配達を行う場所で、荷主等の都合により貨物の受渡しのために待機した時間のことです。荷役等時間とは、荷役その他の附帯業務に従事した時間を指します。
両者を合わせて「荷待ち時間等」といいます。いずれも拘束時間に含まれ、一定の条件を満たす場合は業務記録への記録が義務付けられています。
なぜ今、荷待ち時間が重要なのか
荷待ち時間は、運送会社の経営を静かに圧迫し続けてきた要素です。
国土交通省の調査では、トラックドライバーの1運行当たりの平均拘束時間は2020年度の12時間26分から2024年度は11時間46分へと40分短縮されましたが、依然として長時間拘束の状態が続いています。その内訳のうち、運転していない時間、つまり荷待ちと荷役が相当部分を占めます。
問題の本質は、この時間の多くが運送会社側ではコントロールできないという点にあります。バースが空かない、検品が終わらない、フォークリフトの担当者がいない。原因は荷主側にあるのに、改善基準告示違反のリスクは運送会社が負う。この非対称な構造を是正するため、2024年からの一連の法改正で荷待ち時間が正面から扱われるようになりました。
荷待ち時間の算定方法
国土交通省は荷待ち時間の算定方法を明確に定めています(物流効率化法第30条関係)。
| 条件 | 算定方法 |
|---|---|
| 到着時刻・時間帯の指示がない場合 | 集貨場所等に到着した時刻(到着後速やかに受付等を行う場合はその時刻)から荷役等の開始時刻まで |
| 指示された時刻・時間帯より前に到着した場合 | 指示時刻等から荷役等の開始時刻まで |
| 指示された時刻・時間帯内に到着した場合 | 当該到着時刻から荷役等の開始時刻まで |
| 指示された時刻・時間帯より後に到着した場合 | 当該到着時刻から荷役等の開始時刻まで |
押さえるべき2つの注意点
① 早着分は荷待ち時間にならない
指示時刻より前に着いた場合、カウントの起点は到着時刻ではなく指示時刻です。9時指定の現場に7時に着いても、荷待ち時間は9時からしか計上されません。早着を前提とした運行は、そのまま自社の持ち出しになります。
② 遅着でも「通常生じる荷待ち」は計上できる
運送側の都合で指示時刻より遅く到着した場合でも、到着の遅れにかかわらず生じる荷待ち時間は荷待ち時間に該当します。除外されるのは、遅れに起因して荷役の順番が後ろ倒しになったことで生じた「追加的な」荷待ちだけです。天候や交通事情など荷主等の責任によらない荷待ちも同様の扱いになります。
なお、到着後に速やかに受付を行わず業務上の指示で休憩する時間など、業務から完全に離れられる時間は荷待ち時間に含まれません。
荷役等時間の算定方法
「荷役等」に含まれる業務は幅広く定められています。
荷役(荷積み・荷卸し)、検品、荷造り、搬出・搬入(入出庫や棚入れ・棚出し)、保管、仕分、商品陳列、ラベル貼り、代金の取立て・立替え、荷主等が行う荷役への立会い、その他の通常運転業務に附帯する業務
算定は、荷役等を開始した時刻から終了した時刻まで(荷役等に従事していない時間を除く)です。
ここでも実務上重要な解釈があります。
- 業務上の指示による休憩は荷役等時間に含まれない
- ただし、迅速に車両を動かせる状態での待機や、荷役作業中の立会いが必要であるなど、業務から完全に離れられず実質的に休憩がとれていない時間は荷役等時間に含まれます
- 1つの現場で荷卸しと荷積みの両方を行う場合(復荷の積込み等)は、それぞれを別々の荷役等時間として捉えることが可能です
「待っているだけだから休憩でしょう」という荷主側の主張に対しては、この解釈が反論の根拠になります。
記録義務(業務記録への記載)
貨物自動車運送事業輸送安全規則に基づき、荷待ち時間や荷役作業等は業務記録(乗務記録)への記載が義務付けられています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象車両 | 全車両(2025年4月1日から拡大) |
| 荷待ちの記録要件 | 荷主都合により30分以上待機したとき |
| 荷役等の記録要件 | 荷主との契約書に実施した荷役作業等が全て明記されている場合、合計が1時間以上となったとき |
| 記録項目 | 集貨地点等、集貨地点等への到着・出発時刻、積込み・取卸しの開始・終了時刻 など |
| 荷主確認 | 記録内容について荷主が確認したか、確認が得られなかったかも記録対象 |
| 保存期間 | 最低1年間 |
2025年4月1日の改正が重要です。従来は「車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上の車両」に限られていた記録義務の対象車両が、全車両に拡大されました(令和6年10月1日公布、令和7年4月1日施行)。小型車中心の事業者も対象です。
2時間ルールと国の目標
国が掲げる水準は明確です。
経済産業省・農林水産省・国土交通省の3省による「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」では、荷待ち・荷役に費やされる時間を1運行あたり2時間以内とすることが求められ、2時間以内に収まった場合はさらに1時間以内を目標に設定して短縮を図ることとされています。
また政府目標として、令和10年度までに全国の貨物自動車輸送の5割の運行で荷待ち時間等を1時間削減し、運転者1人当たり年間125時間の短縮を実現することが掲げられています。
荷主に課された努力義務
2025年4月から、すべての荷主に「荷待ち時間の短縮」「荷役等時間の短縮」が努力義務として課され、その具体的内容が判断基準(省令)で定められています。
荷待ち時間の短縮に関する取組例
- トラック予約受付システムの導入、混雑時間を回避した日時指定による出荷・納品日時の分散
- 寄託先倉庫への受発注の前倒しによる作業時間の確保
荷役等時間の短縮に関する取組例
- パレット、ロールボックスパレット(カゴ車)等の輸送用器具の導入
- 標準仕様パレットの導入等、一貫パレチゼーションに向けたパレット標準化
- バーコード等のタグ導入、検品・返品水準の合理化による検品の効率化
- 事前出荷情報の活用による伝票レス化・検品レス化
- バース等の荷捌き場を貨物の量に応じて適正に確保すること
- フォークリフトや荷役作業員の適切な配置
判断基準にはさらに、やむを得ない遅延に対するペナルティの見直しや、必要以上に早い到着が生じないよう配慮することも明記されています。到着遅延に対する過度なペナルティが早着を誘発し、それが荷待ちを生むという構造が問題視されているためです。
運送会社の経営者が押さえるべきポイント
① 記録は「コスト」ではなく「請求根拠」
国土交通省は改正の目的として、事業者が自身の荷待ち時間・荷役時間を記録することで、待機時間料や積込料・取卸料などを荷主から適正に収受する根拠とすることができると明言しています。
記録義務を事務負担としてこなすか、運賃交渉の材料として使うかで、同じ作業の意味がまったく変わります。標準的な運賃には待機時間料や荷役作業等料が設定されており、実績データがなければ請求できず、あれば交渉できるというだけの話です。
② 荷主のほうが自社の荷待ち実態を知らない
これは実務上の急所です。荷主には荷待ち・荷役時間の短縮が努力義務として課されましたが、多くの荷主は自社の庭先で何時間待たされているかを把握していません。国土交通省も、把握できていない荷主が運送事業者に確認を取ることを想定しているとしています。
つまり、荷待ちデータを整えている運送会社は、荷主にとって「必要な取引先」になります。単価を叩かれる下請けから、コンプライアンス対応を助けるパートナーへ立場を変えられる、数少ない機会です。
③ 早着は自社の持ち出しになる
指示時刻より早く着いても、荷待ち時間は指示時刻からしかカウントされません。渋滞を見越した早発が常態化している運行は、その分が丸ごと自社負担になっています。配車設計を見直す価値があります。
④ 「休憩でしょう」に反論する根拠がある
車両を動かせる状態での待機や、荷役への立会いが必要な時間は、休憩ではなく荷役等時間です。実質的に業務から離れられない時間である以上、拘束時間として扱われます。この解釈は国が明示しています。
⑤ 全車両が記録対象になった
2025年4月から小型車も対象です。「うちは8トン未満だから関係ない」は通用しません。記録を怠れば行政処分のリスクを負い、同時に請求根拠も失います。
よくある質問
- 荷待ち時間はどこから記録が必要ですか。 A. 荷主都合により30分以上待機した場合に、業務記録への記載が必要です。集貨地点等、到着・出発時刻、積込み・取卸しの開始・終了時刻などを記録し、最低1年間保存します。
- 指示時刻より早く到着した場合、待った時間はすべて荷待ち時間になりますか。 A. なりません。指示された時刻・時間帯より前に到着した場合、荷待ち時間は指示時刻から起算されます。
- 渋滞で遅れて到着した場合、荷待ち時間は計上できませんか。 A. 到着の遅れにかかわらず通常生じる範囲の荷待ち時間は計上できます。除外されるのは、遅れに起因して荷役の順番が後ろ倒しになったことで追加的に生じた荷待ち時間です。
- 待っている間は休憩扱いになりませんか。 A. 業務から完全に離れられる時間であれば荷待ち時間に含まれませんが、迅速に車両を動かせる状態での待機や荷役作業中の立会いが必要な時間など、実質的に休憩がとれていない時間は荷役等時間に含まれます。
- 記録義務の対象車両は何トン以上ですか。 A. 2025年4月1日から全車両が対象です。従来の「車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上」という要件は撤廃されました。
- 荷役作業の記録はいつも必要ですか。 A. 荷主との契約書に実施した荷役作業等が全て明記されている場合は、所要時間の合計が1時間以上となったときが記録対象です。
関連用語
参考・出典
- 国土交通省「『荷待ち時間』と『荷役等時間』の算定方法について」(物流効率化法 理解促進ポータルサイト) https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/method/
- 国土交通省「荷主(第一種・第二種)の判断基準等」 https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/sippers/judgment-criteria/
- 国土交通省「荷待時間や荷役作業・附帯業務の『業務記録』への記録義務の対象が、全車両に拡大」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001865382.pdf
- 国土交通省「乗務記録の記載対象となる荷待時間・荷役作業等について」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr4_000026.html
- 経済産業省・農林水産省・国土交通省「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」
※本記事は2026年7月時点の情報です。個別の適用判断は所轄の運輸支局または専門家にご確認ください。