標準的な運賃
読み方:ひょうじゅんてきなうんちん
標準的な運賃とは、一般貨物自動車運送事業者が持続的に事業を運営するために参考とすべき運賃として、国土交通大臣が告示する運賃の目安です。
制度の趣旨
トラック運送業は事業者数が多く、荷主に対して交渉上不利な立場に置かれやすい構造があります。その結果、法令を遵守した運行では成り立たない水準まで運賃が下がり、長時間労働と低賃金が常態化してきました。
そこで、適正な原価に適正な利潤を加えた運賃の水準を国が示すことで、事業者が交渉の根拠を持てるようにしたのが標準的な運賃の制度です。
2024年3月改定のポイント
2024年3月22日、新たな標準的な運賃が告示されました(令和6年国土交通省告示第209号、同年6月1日施行)。改定の柱は次のとおりです。
① 運賃水準を平均約8%引き上げ
燃料費や人件費の上昇、時間外労働の上限規制への対応を反映した水準です。
② 荷役の対価等を新たに加算
これが実務上、最も大きな変更点です。運送以外の作業に対する対価が明示されました。
| 料金項目 | 内容 |
|---|---|
| 待機時間料 | 30分ごとに設定(車格別)。小型車1,670円、中型車1,760円、大型車1,890円、トレーラ2,220円 |
| 積込料・取卸料 | 荷役作業ごとに設定。公共工事設計労務単価表を参考に算定。中型車の場合、機械荷役2,180円/手荷役2,100円(30分ごと) |
| 割増 | 荷待ち・荷役の時間が合計2時間を超えた場合、割増率5割 |
③ 標準貨物自動車運送約款の見直し
運送の対価と、運送以外の役務の対価が別の章に分離され、荷主から対価を収受する旨が明記されました。
経営者が押さえるべきポイント
「標準的な運賃を知っている」だけでは1円も増えません。使えるのは記録がある会社だけです。
待機時間料も積込料・取卸料も、実績を示せなければ請求できません。
- 荷待ち時間は、荷主都合で30分以上待機した場合に業務記録への記載が義務(2025年4月から全車両が対象)
- 荷役等時間も、契約書に荷役作業等が明記されている場合、合計1時間以上で記録が必要
- 記録は最低1年間保存
国土交通省自身が、事業者が荷待ち時間・荷役時間を記録することで「待機時間料や積込料・取卸料などを荷主から適正に収受する根拠とすることができる」と明言しています。記録義務は、規制であると同時に武器です。
交渉の進め方
- 直近3〜6か月の荷待ち・荷役の実績を荷主別・現場別に集計する
- 標準的な運賃に照らして、本来収受すべき金額を算出する
- 現行運賃との差額を提示し、①作業を削減するか、②対価を支払うかの選択を示す
「値上げしてください」ではなく「制度上こうなっており、御社にも短縮の努力義務がある」という組み立てにすることで、交渉の性質が変わります。改正物流効率化法では荷主の判断基準に、運送契約の協議の際に標準的運賃を活用することが明記されています。
関連用語
参考・出典
- 国土交通省「『標準的な運賃』について」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000118.html
- 国土交通省 報道発表「新たなトラックの標準的運賃を告示しました」(令和6年3月22日)
- 国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/
- 国土交通省「特定事業者の指定」 https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/designation/
- 国土交通省「荷待時間や荷役作業・附帯業務の『業務記録』への記録義務の対象が、全車両に拡大」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001865382.pdf
- 国土交通省「改正貨物自動車運送事業法(令和7年4月1日施行)について」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000014.html
※各ページには「本記事は2026年7月時点の情報です。個別の適用判断は所轄の運輸支局または専門家にご確認ください。」の注記を入れてください。
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