改善基準告示とは?拘束時間・休息期間・運転時間の上限をまとめて解説 | 運送社長支援

改善基準告示

読み方:かいぜんきじゅんこくじ 正式名称:自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平成元年労働省告示第7号)

 

改善基準告示とは、トラック・バス・タクシー等の運転者について、拘束時間の上限や休息期間などの基準を定めた厚生労働大臣告示です。

 

2022年12月に改正され、2024年4月1日から新基準が適用されています。トラック運転者の場合、1年3,300時間・1か月284時間・1日13時間が拘束時間の原則的な上限です。

 

改善基準告示とは

改善基準告示は、自動車運転者の長時間労働を防ぐために設けられた基準です。運転者自身の健康確保だけでなく、交通事故を防ぎ国民の安全を守るという目的も持っています。

 

背景は深刻です。道路貨物運送業は、脳・心臓疾患による労災の請求件数・支給決定件数がともに全業種でワースト1(令和4年度:請求133件、支給決定50件)という状況が続いてきました。

 

1997年(平成9年)の見直し以降、長らく改正されていませんでしたが、働き方改革関連法によりドライバーにも時間外労働の上限規制(年960時間)が適用されることになり、これに合わせて2022年12月に改正(令和4年厚生労働省告示第367号)、2024年4月1日から適用されています。

拘束時間と休息期間の違い

改善基準告示を読むうえで、この2語の理解が前提になります。

 

用語意味
拘束時間始業から終業までのすべての時間。労働時間+休憩時間。荷待ちなどの手待ち時間、仮眠時間も含む
休息期間終業から次の始業までの、使用者の拘束を受けない時間。運転者が完全に自由にできる時間

 

荷待ち時間が拘束時間に含まれるという点が、運送業の実務では決定的に重要です。この構造が後述する「荷主対策」につながります。

 

トラック運転者の基準一覧(2024年4月適用)

区分基準
1年の拘束時間3,300時間以内

【例外】労使協定により3,400時間以内

1か月の拘束時間284時間以内

【例外】労使協定により310時間以内(年6か月まで)

1日の拘束時間13時間以内(上限15時間、14時間超は週2回までが目安)

【例外】宿泊を伴う長距離貨物運送は16時間まで(週2回まで)

1日の休息期間継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない

【例外】宿泊を伴う長距離貨物運送は継続8時間以上(週2回まで)

運転時間2日平均1日9時間以内/2週平均1週44時間以内
連続運転時間4時間以内

【例外】SA・PA等に駐停車できない場合、4時間30分まで

休日労働2週間について1回を超えない

 

労使協定で月310時間まで延長する場合には、次の2条件を満たす必要があります。

 

  • 284時間を超える月が連続3か月まで(4か月連続は不可)
  • 1か月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努める

 

「宿泊を伴う長距離貨物運送」とは、1週間の運行がすべて長距離貨物運送(一の運行の走行距離が450km以上)で、かつ一の運行における休息期間が住所地以外の場所である場合を指します。この特例で拘束16時間・休息8時間とした場合、一の運行終了後には継続12時間以上の休息期間が必要です。

 

連続運転時間と「4時間30分ルール」

連続運転時間は4時間以内です。ここでいう連続運転時間とは、1回がおおむね連続10分以上、かつ合計30分以上の運転の中断をすることなく運転する時間を指します。

 

2024年の改正で押さえるべき変更点は3つです。

 

① 運転の中断は「原則として休憩」

 

従来は中断中に荷積み・荷下ろしを行うことが常態化し、実質的な休憩が確保されていませんでした。改正後は原則として休憩を与えることとされています。ただし短期的な見直しが難しい特段の事情がある場合、中断時に荷役を行っても直ちに違反にはなりません。中断時に休憩がまったく確保されないような月間の運行計画を組むことは認められません。

 

② 10分未満の中断は3回以上連続させない

 

「おおむね10分以上」の解釈です。なお厚生労働省のQ&Aでは、中断時間5分は「おおむね10分」から著しく乖離するため中断と認められないとされています。

 

③ 4時間30分まで延長できるのは例外

 

SA・PA・コンビニ・道の駅等が満車で駐停車できず、やむを得ず4時間を超える場合に限り30分の延長が認められます。4時間を超えることを前提とした運行計画を立てることは認められません。

 

予期し得ない事象への対応

事故・故障・災害等に遭遇した場合、その対応に要した時間を1日の拘束時間・2日平均の運転時間・連続運転時間から除くことができます。

 

対象となるのは次の4類型です。

 

  1. 運転中に乗務している車両が予期せず故障したこと
  2. 運転中に予期せず乗船予定のフェリーが欠航したこと
  3. 運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖された/渋滞したこと
  4. 異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運行が困難となったこと

 

お盆の帰省ラッシュや大型イベントによる自然渋滞は該当しません。警報が発表されない異常気象も対象外です。

 

適用には運転日報上の記録に加え、客観的な資料(修理明細書、フェリー会社の欠航情報の写し、道路交通情報の写し、気象庁の気象情報の写し等)が必要です。

 

特例

分割休息

継続9時間以上の休息期間を与えることが困難な場合、当分の間、一定期間(1か月程度)における全勤務回数の2分の1を限度に、休息期間を分割して与えられます。

 

  • 1回あたり継続3時間以上
  • 2分割の場合は合計10時間以上、3分割の場合は合計12時間以上
  • 3分割となる日が連続しないよう努める

2人乗務(ツーマン運行)

車両内に身体を伸ばして休息できる設備がある場合、最大拘束時間を20時間まで延長し、休息期間を4時間まで短縮できます。

 

さらに車両内ベッドが長さ198cm以上・幅80cm以上の連続した平面で、クッション材等により路面からの衝撃が緩和されるものであり、運行終了後に継続11時間以上の休息期間を与える場合は24時間まで。加えて8時間以上の仮眠時間を与える場合は28時間まで延長できます。

隔日勤務

業務の必要上やむを得ない場合、2暦日の拘束時間21時間以内・勤務終了後に継続20時間以上の休息期間を与えることを条件に可能です。仮眠施設で夜間4時間以上の仮眠を与える場合は、2週間について3回を限度に2暦日の拘束時間を24時間まで延長できます。ただし2週間の総拘束時間は126時間を超えられません。

フェリー

フェリー乗船時間は原則として休息期間として扱われ、与えるべき休息期間から差し引けます。ただし減算後の休息期間は、フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの時間の2分の1を下回ってはなりません(2人乗務を除く)。乗船時間が8時間を超える場合は、原則として下船時刻から次の勤務が開始されます。

 

休日の取り扱い

改善基準告示上の休日は「休息期間+24時間の連続した時間」であり、いかなる場合も30時間を下回ってはなりません

 

通常勤務であれば休息期間は9時間を下回れないため、9+24=継続33時間以上が必要になります。隔日勤務の場合は20+24=44時間です。

 

罰則はあるのか

改善基準告示は法律ではなく厚生労働大臣告示であるため、告示自体に罰則規定はありません

 

ただし「罰則がない=守らなくてよい」ではありません。

 

  • 労働基準監督署の監督指導で違反が認められれば、是正に向けた指導が行われます
  • 運行管理に関する規定等に重大な違反の疑いがあるときは、貨物自動車運送事業法に基づく行政処分の対象となることがあります
  • 別途、時間外労働の年960時間の上限は労働基準法上の規制であり、違反すると6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります

 

告示違反は行政処分と労基法違反の入口になり得る、という理解が実務的には正確です。

 

適用対象者

対象は「主たる業務が自動車の運転である人」です。職種名が「運転者」かどうかは関係ありません。

 

  • 自動車の運転時間が労働時間の半分を超え、その業務時間が年間総労働時間の半分を超える見込みなら該当
  • 緑ナンバーだけでなく白ナンバーも、軽自動車も対象(四輪以上・公道を走行する車両)
  • 製造業の配達部門の運転者なども該当
  • 労働者に当たらない個人事業主は直接の対象ではないが、国土交通省の告示により実質的に遵守が求められます

 

一方、災害対策基本法等に基づく緊急輸送、人命・公益保護のため法令や国・自治体の要請に基づき行う運転、消防法等に基づく危険物の運搬業務は適用除外です(ただし石油タンクローリー等の頻繁に行われる輸送は対象)。

 

運送会社の経営者が押さえるべきポイント

① 月284時間を毎月使うと、年3,300時間を超える

 

これが最も見落とされる落とし穴です。284時間×12か月=3,408時間となり、1年の上限3,300時間を100時間以上超過します。月の上限だけを見て配車していると、年度末に必ず破綻します。年間から逆算した月次の枠配分を先に決めてください。

 

② 荷待ちは拘束時間。だから荷主に是正を求められる

 

拘束時間には荷待ちなどの手待ち時間が含まれます。つまり荷主都合の長時間の荷待ちが、そのまま自社の告示違反を生む構造です。

 

この点は2022年の改正で制度的な手当がなされました。長時間の恒常的な荷待ちが疑われる場合、労働基準監督署から発着荷主・元請運送事業者に対して配慮を要請する仕組みが新設され、厚生労働省から国土交通省へ情報提供が行われ、国交省から貨物自動車運送事業法に基づく「働きかけ」等が実施されます。厚労省には「長時間の荷待ちに関する情報メール窓口」も設置されています。

 

荷待ちデータを記録し、まず荷主と協議の場を持つ。改善されなければ通報窓口という選択肢がある。これは交渉のカードです。

 

③ 予期し得ない事象は「1か月の拘束時間」からは除けない

 

除外できるのは1日の拘束時間・2日平均の運転時間・連続運転時間の3つだけです。月末に事象が発生しても、1か月の拘束時間の上限を超えた分を差し引くことはできません。ここを誤解している現場は少なくありません。

 

④ 軽貨物・白ナンバーも無関係ではない

 

軽自動車も白ナンバーも対象です。業務委託の個人事業主ドライバーも、国交省告示により実質的な遵守が求められます。「うちは軽貨物だから」は通用しません。

 

⑤ 労働時間を削るだけでは人が辞める

 

拘束時間を削減すれば、歩合を含むドライバーの手取りは下がります。賃金が下がれば他産業へ流出し、輸送力そのものを失います。時間短縮・運賃交渉・待遇改善はセットで進めるしかありません。適正運賃の収受なくして改善基準告示の遵守は成立しない、というのが実務上の結論です。

 

よくある質問

  1. 改善基準告示に違反すると罰則がありますか。 A. 告示自体に罰則規定はありません。ただし労働基準監督署による指導の対象となり、運行管理に関する重大な違反が疑われる場合は貨物自動車運送事業法に基づく行政処分の対象となることがあります。

 

  1. 拘束時間に荷待ち時間は含まれますか。 A. 含まれます。拘束時間は始業から終業までのすべての時間で、労働時間・休憩時間に加え、荷待ちなどの手待ち時間や仮眠時間も含みます。

 

  1. 月284時間を毎月使い切っても問題ありませんか。 A. 問題があります。284時間×12か月=3,408時間となり、1年の上限3,300時間を超えて違反となります。年間から逆算した管理が必要です。

 

  1. 連続運転の中断は5分でも認められますか。 A. 認められません。厚生労働省のQ&Aでは、5分は「おおむね10分」から著しく乖離しているため中断時間と認められないとされています。また10分未満の中断が3回以上連続することも認められません。

 

  1. 白ナンバーや軽自動車も対象ですか。 A. 対象です。営業用・自家用を問わず、四輪以上で公道を走行する車両の運転を主たる業務とする場合は改善基準告示が適用されます。

 

  1. 運転時間の「2日平均9時間」はどう計算しますか。 A. 特定日を基準に、前日との平均と翌日との平均を計算し、どちらも9時間を超えた場合に違反となります。一方が9時間以内であれば違反にはなりません。

 

関連用語

 

参考・出典

 

※本記事は2026年7月時点の情報です。個別の適用判断は所轄の労働基準監督署または専門家にご確認ください。

 

 

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