バース / トラック予約受付システム
読み方:バース/トラックよやくうけつけシステム 英語表記:Berth
バースとは、倉庫や物流センターでトラックが接車し、荷物の積み降ろしを行うスペースのことです。トラック予約受付システムとは、そのバースの利用時刻を事前にWeb等で予約する仕組みを指します。
語源は、船舶が港で停泊して荷役を行う場所を意味する「Berth(停泊所)」です。トラックが倉庫に接車して作業を行う場所という意味で転用されました。
バースの基礎知識
混同されやすい3語の違い
| 用語 | 指すもの |
|---|---|
| バース | トラックが接車して荷役を行うスペース。「トラックが停まる場所」 |
| トラックヤード | バースを含む施設外周の敷地全体。車両の進入から接車、退出までの動線を確保する空間 |
| プラットフォーム | 接車した車両から荷物を移動させるための建物側の床面・荷役台。「作業員やフォークリフトが動く場所」 |
高床バースと低床バース
| 形式 | 特徴 |
|---|---|
| 高床バース | 床面をトラック荷台の高さに合わせた形式。フォークリフトが荷台へ直接乗り入れでき、荷役が速い |
| 低床バース | 床面が地面と同じ高さ。車格を選ばず接車でき、台車やハンドリフトでの作業に向く |
高床は効率が高い反面、車高の合わない車両では作業しづらく、テールゲートリフター等が必要になる場合があります。
トラック予約受付システムとは
トラックドライバーや運送会社が、倉庫への到着時刻をスマートフォン等から事前に予約できるシステムです。「バース予約システム」「バース管理システム」「入出荷受付システム」など、事業者によって呼称は異なりますが、指しているものは同じです。
基本的な流れ
① 施設側が予約可能な時間枠を提示
↓
② 運送会社・ドライバーが到着時刻を予約
↓
③ システム上に予約内容が反映される
↓
④ 施設側が到着予定に基づき庫内作業を計画し、人員を配置
↓
⑤ 予約時間に合わせて受付・接車・荷役
導入前と導入後で何が変わるか
導入前(受付順で処理)
受付開始と同時に車両が集中します。「早く並んで早い順番を取りたい」「列が長くなると間に合わないかもしれない」という心理が働き、全員が早着を目指します。結果として長い行列ができ、施設側も次に何を荷役するのか事前にわかりません。
導入後(予約制)
到着車両が時間帯に分散します。ドライバーは「10時に着けばいい」と判断でき、施設側は「A社の次はB社だから準備しておこう」と作業を先読みできます。
導入効果(国土交通省の事例)
国土交通省が公表した導入事例では、次の効果が示されています。
| 指標 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 1台当たり平均待機時間 | 83分 | 24分(約70%削減) |
| 倉庫の1時間当たり取扱貨物数 | 659個 | 833個(約20%増加) |
導入前は8割超の車両が待機時間1時間超でしたが、導入後は1時間以内に収まったと報告されています。
注目すべきは、削減効果が運送側だけに出ているわけではない点です。倉庫側の処理能力が2割向上していることが、この施策の本質を示しています。荷待ちの削減は運送会社への譲歩ではなく、施設側の生産性向上でもあるということです。
法令上の位置づけ
荷主の努力義務(改正物流効率化法)
2025年4月から、すべての荷主に「荷待ち時間の短縮」が努力義務として課され、判断基準(省令)にその具体的な取組が示されています。
その筆頭に挙げられているのが、トラック予約受付システムの導入です。
トラックが一時に集中して到着することがないよう、トラック予約受付システムの導入や混雑時間を回避した日時指定等により、貨物の出荷・納品日時を分散させること。
ただし国は、同じ箇所で明確な釘を刺しています。
なお、トラック予約受付システムについては、単にシステムを導入するだけではなく、関係事業者の配送スケジュールに配慮した予約時間の調整や利用率の向上など、現場の実態を踏まえ実際に荷待ち時間の短縮につながるような効果的な活用を行うこと。
「入れました」で終わらせるな、という警告です。この一文は交渉の場面で使えます。
総合効率化計画の認定要件
物流総合効率化法に基づく計画認定において、トラック予約受付システムには次の要件が示されています。
- トラック事業者・運転者等が、到着予定時刻を電子的な方法により事前に予約できるシステムであること
- 到着予定時刻の情報を、到着時刻表示装置を通じて施設内に表示するシステムであること
- 表示装置は、映像面の最大径が38cm(15インチ)以上の表示器、または施設内作業者の携帯用表示器を有すること
- 日常的に当該施設に出入りする主要なトラック会社が利用するものであること
あわせて、トラックの待機時間の実績を計測する仕組みを構築することが必要とされています。
普及状況と導入が失敗する理由
経済産業省・農林水産省・国土交通省による調査では、トラック予約受付システムを導入している荷主事業者は7%程度、すべての拠点に導入している荷主事業者は1%程度にとどまるとされています。
つまり、ほとんどの現場ではまだ導入されていません。
導入しても効果が出ないケースには、共通する原因があります。
① 入れただけで運用していない
予約枠の設計が実態に合っておらず、結局は早い者勝ちに戻る。国が判断基準でわざわざ注意喚起しているのは、この事例が多いためです。
② 予約枠が足りず、望む時間が取れない
バース数に対して荷量が過大であれば、予約制にしても待ち行列が予約待ちに変わるだけです。ドライバーの不満は「待たされる」から「取れない」に移ります。
③ 一部の運送会社しか使っていない
未登録の車両が飛び込みで来れば、予約した車両が押し出されます。要件④に「主要なトラック会社が利用するもの」とあるのは、この理由からです。
④ 実績を計測していない
削減効果を測っていなければ、改善も交渉もできません。
運送会社の経営者が押さえるべきポイント
① 予約システムは荷主に「導入させる」もの。提案の材料を持て
自社で導入するものではなく、荷主の施設に入れてもらうものです。そして荷主には荷待ち短縮の努力義務があり、判断基準にはトラック予約受付システムが明記されています。
提案の組み立てはこうなります。
- 自社の荷待ち実績を、現場別・時間帯別に集計して示す
- 到着集中が起きている時間帯を可視化する
- 国交省の事例(待機83分→24分、倉庫の処理能力2割増)を示し、荷主側にもメリットがあることを伝える
- 判断基準に取組事項として明記されている事実を添える
「待たせないでほしい」ではなく「御社の庫内生産性も上がります」と言えるかどうかで、話の通り方が変わります。
② 導入済みの現場では「運用」を見る
予約システムがあるのに荷待ちが減っていない現場は珍しくありません。その場合、問題はシステムではなく運用です。予約枠の設計、飛び込み車両の扱い、遅延時のルール。ここを協議のテーブルに乗せてください。国が「単に導入するだけでは不十分」と明記していることが根拠になります。
③ それでも待たされるなら、記録して請求する
改善が進まない場合の選択肢は明確です。荷主都合で30分以上待機した場合は業務記録への記載が義務であり(2025年4月から全車両が対象)、標準的な運賃には待機時間料が設定されています。
削減できないなら対価を払う。この二択を示せる状態をつくることが、交渉の目的です。
④ 自社が倉庫を持つなら、導入は受注要件になり得る
保管・荷役を受託している事業者にとって、予約システムの有無は荷主から見た選定条件になりつつあります。同時に、庫内の人員配置を計画化できるため、自社の労務コスト削減にも直結します。
よくある質問
- バースとトラックヤードは何が違いますか。 A. バースはトラックが接車して荷役を行うスペースそのものを指し、トラックヤードはバースを含む施設外周の敷地全体(進入から退出までの動線を確保する空間)を指します。
- トラック予約受付システムを導入すると、どのくらい荷待ちが減りますか。 A. 国土交通省が公表した事例では、1台当たりの平均待機時間が83分から24分へ約70%削減され、あわせて倉庫の1時間当たり取扱貨物数が659個から833個へ約20%増加したと報告されています。効果は現場の条件によって異なります。
- 予約システムは運送会社が導入するものですか。 A. 通常は荷主・倉庫側の施設に導入されるものです。2025年4月から荷主には荷待ち時間短縮の努力義務が課され、判断基準にトラック予約受付システムの導入が取組例として明記されています。
- 予約システムがあるのに荷待ちが減りません。 A. 運用に課題があるケースが大半です。国土交通省も判断基準の中で、単に導入するだけでなく、配送スケジュールに配慮した予約時間の調整や利用率の向上など、実際に荷待ち短縮につながる活用を行うよう求めています。予約枠の設計や飛び込み車両の扱いについて、荷主と協議する余地があります。
- 高床バースと低床バースはどちらが効率的ですか。 A. 荷役効率だけを見れば、フォークリフトが荷台へ直接乗り入れできる高床バースが有利です。ただし車高の合わない車両では作業しづらいため、取り扱う車格に応じた選択が必要です。
関連用語
参考・出典
- 国土交通省物流審議官部門「『トラック予約受付システム』の導入事例」 https://www.mlit.go.jp/common/001182131.pdf
- 国土交通省「荷主(第一種・第二種)の判断基準等」(物流効率化法 理解促進ポータルサイト) https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/sippers/judgment-criteria/
- 国土交通省「『荷待ち時間』と『荷役等時間』の算定方法について」 https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/method/
- 全日本トラック協会「『トラック予約受付システム』のご案内 〜荷待ち時間の削減に向けて〜」
※本記事は2026年7月時点の情報です。導入効果は施設の条件により異なります。個別の適用判断は所轄の運輸支局または専門家にご確認ください。