燃料サーチャージとは?計算式・届出・導入手順を解説 | 運送社長支援

燃料サーチャージ

読み方:ねんりょうサーチャージ

 

燃料サーチャージとは、燃料価格の上昇・下落によるコストの増減分を、運賃とは別建ての運賃として設定する制度です。

 

基準とする燃料価格より一定額以上上昇した場合に設定または増額改定し、下落した場合は減額改定、基準価格を下回った場合は廃止します。

 

なぜ別建てにするのか

燃料費は、運送原価の中で最も変動が大きい費目です。全日本トラック協会の経営分析報告書によれば、営業費用に占める燃料油脂費は1割前後を占めます。

 

問題は、この費目が自社の努力では制御できないという点にあります。市況によって単価が動き、上昇すればそのまま利益を削ります。

 

そこで、運賃本体とは切り離し、燃料価格の変動分だけを別建てで調整する仕組みが燃料サーチャージです。

 

国土交通省が令和2年4月に告示した標準的な運賃でも、燃料サーチャージは運賃表の対象外とされました。運輸審議会の答申は、その理由を「燃料価格の変動によるコストの増減分を別建て運賃として設定する制度であるため、別途定めるところにより収受することとしている」と説明しています。

 

計算式

国土交通省のガイドラインが示す算出式は、きわめてシンプルです。

距離制運賃の場合

燃料サーチャージ額(円)

 

= 走行距離(km) ÷ 燃費(km/L) × 算出上の燃料価格上昇額(円/L)

時間制運賃の場合

燃料サーチャージ額(円)

 

= 平均走行距離(km) ÷ 燃費(km/L) × 算出上の燃料価格上昇額(円/L)

 

荷主等と継続的に契約している場合、平均走行距離は1日・1か月・半期当たり等の期間実績で算出します。

計算例

国土交通省の資料に掲載された例です。

 

燃料価格100円/Lの際、燃費3km/Lの車両で150kmの輸送を行う場合 1,750円 = 150km ÷ 3km/L × 35円/L

 

この例では基準価格を65円としており、現在価格100円との差である35円が「算出上の燃料価格上昇額」になります。

 

導入の4ステップ

① 基準となる燃料価格を設定する

変動幅を捉えるための基準価格を決めます。国土交通省のガイドラインは2つの方法を示しています。

 

方法考え方
運賃届出時点の燃料価格を基準とする届出後に燃料価格が変動し、現行運賃との間に格差が生じているという捉え方
荷主と運賃契約を交わした時点の燃料価格を基準とする契約時に双方が運送原価を理解していた前提で、契約後の上昇を「想定外のコスト」と捉える考え方

② 改定条件(きざみ幅)を設定する

燃料価格は日々変動するため、その都度改定するのではなく、一定の価格帯を設定し、その価格帯における算出上の燃料価格上昇額を決めておきます。

 

価格帯の幅は5円刻みや10円刻みなどで設定するのが一般的です。あわせて、改定条件と廃止条件を設定時に明確に荷主へ示しておく必要があります。

 

改定する価格帯算出上の価格上昇額(基準価格65円の場合)
65円未満サーチャージ廃止
65〜75円未満70円5円
75〜85円未満80円15円
85〜95円未満90円25円
95〜105円未満100円35円
105〜115円未満110円45円
115〜125円未満120円55円

 

※国土交通省の資料に例示された価格変動表。基準価格・きざみ幅は自社で設定します。

③ 車両燃費を把握する

計算の基礎になるのが自社の燃費です。ガイドラインは次の点を推奨しています。

 

  • 燃費は荷主別・車種別に把握しておくことが望ましい
  • 同じ車種・運行でも貨物量やエコドライブのレベルで変化するため、自社のデータを正確に把握することが重要
  • エコドライブを前提にした燃費をベースにすることが望ましい(事業者の自助努力が求められるため)

④ サーチャージ額を算出する

前述の計算式で、キロ程別・車種別のサーチャージ表を作成します。

 

届出が必要です

ここは見落とされやすい実務ポイントです。

 

燃料サーチャージは新たに設定する別建て制度であるため、これを設定・変更した場合は、貨物自動車運送事業報告規則第2条の2の規定により、30日以内に「運賃料金設定(変更)届出書」を地方運輸支局等の窓口に提出する必要があります。

 

届出書には、運賃・料金の種類(燃料サーチャージ)、額、適用方法、実施年月日、設定を必要とする理由を記載します。

 

普及状況と交渉の現実

届出率は3割程度

国土交通省の資料によれば、燃料サーチャージの届出率は次のように推移しています。

 

時点届出率
平成31年3月8.0%
令和3年9月20.7%
令和4年3月26.3%
令和4年9月30.0%

 

上昇傾向にあるものの、依然として7割の事業者が届出をしていません。

4割が「交渉していない」

令和3年度の輸送実態調査(運送事業者984社)では、燃料高騰に対する価格転嫁の状況が次のように報告されています。

 

状況割合
価格改定等を行った46.8%
価格交渉しなかった39.3%
価格交渉したが、改定に至らなかった11.3%
価格交渉に応じてもらえなかった2.7%

 

注目すべきは、改定に至らなかった(11.3%)や応じてもらえなかった(2.7%)よりも、そもそも交渉していない(39.3%)が圧倒的に多いという点です。

 

同調査で挙げられた「価格交渉しなかった理由」は次のとおりです。

 

  • 以前断られた、言い出しにくい
  • 荷主も原価が高騰している
  • 過去に交渉して仕事量を減らされた
  • 価格が下がった時に値下げ交渉される
  • 仕事を失う可能性がある
  • 交渉まで手が回らない
  • 自社の準備不足
  • 安く仕事を取る他社に仕事を取られる

 

多くは交渉して断られたのではなく、交渉の前に諦めています。

 

経営者が押さえるべきポイント

① 不当な据え置きは、独占禁止法違反のおそれがある

 

これが最も重要な事実です。国土交通省は次のように明示しています。

 

燃料費の上昇分を運賃等に反映することを求めたにもかかわらず不当に据え置くことは、独占禁止法の違反(買いたたき)等になるおそれがあるとともに、改正貨物自動車運送事業法に基づき、国交省による荷主への働きかけや、要請、勧告・公表等の対象にする

 

つまり、燃料費の転嫁を拒む荷主は、法的なリスクを負う立場にあります。「お願い」ではなく「制度上そうなっている」と説明できる論点です。

 

国土交通省は全国に相談窓口を設置しており、意見募集の対象としても燃料価格に関する事項を明記しています。

 

② 導入しないこと自体にもリスクがある

 

意外に知られていませんが、燃料サーチャージを導入しない事業者側にもリスクがあります。

 

貨物自動車運送事業法第26条では、国土交通大臣が運賃・料金の変更を命令できるとされ、その発動基準に「他のトラック事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがある場合」が規定されています。

 

国土交通省のガイドラインは、ガイドラインを遵守して導入している事業者は燃油費に関して発動基準に該当しないと推察される一方、導入しない事業者については発動基準に該当するおそれが依然として残るとしています。合理的理由なく導入しない場合、立入検査や指導、事業改善命令の対象となり得ます。

 

燃料サーチャージは「取れたらいいもの」ではなく、制度上導入が想定されているものです。

 

③ 事業者間で足並みを揃えてはいけない

 

ここは注意が必要です。ガイドラインは次のように明記しています。

 

個々のトラック事業者が、燃料サーチャージの導入又はその内容について個別に決定すること自体は、独占禁止法上の問題は生じない。しかしながら、これらについて、事業者間で、又は事業者団体において、合意・決定すれば、独占禁止法上問題となる

 

「地域の同業者で相談して同じ水準にしよう」という動きは、カルテルにあたる可能性があります。導入はあくまで自社単独で判断してください。

 

④ 燃費の把握が交渉力になる

 

計算式の変数は「走行距離」「燃費」「燃料価格上昇額」の3つだけです。走行距離と燃料価格は動かせませんが、燃費は自社が把握しているかどうかで精度が変わります。

 

荷主別・車種別の燃費データを持っていれば、「この運行では1kmあたり何円のコスト増になっている」と即座に示せます。デジタコやTMSで走行距離・燃料消費量を取得している会社は、この作業を短時間で行えます。

 

⑤ 運行三費の把握とセットで進める

 

燃料サーチャージは燃料費の変動分だけを扱う仕組みです。そもそもの原価が把握できていなければ、基準価格の妥当性も判断できません。

 

運行三費(燃料油脂費・修理費・タイヤチューブ費)を1km当たりで把握し、そのうえで燃料サーチャージを設計するのが正しい順序です。

 

⑥ 契約書面に書く義務がある

 

2025年4月から、運送契約締結時の書面交付が義務化されました。法定記載事項には「その他特別に生ずる費用に係る料金(例:高速道路利用料、燃料サーチャージ等)」が含まれています。

 

書面に記載しないまま口頭で運用している場合、法令上の問題があるだけでなく、収受の根拠も失います。

 

よくある質問

  1. 燃料サーチャージとは何ですか。 A. 燃料価格の上昇・下落によるコストの増減分を、運賃とは別建ての運賃として設定する制度です。基準価格より一定額以上上昇した場合に設定・増額し、下落すれば減額、基準価格を下回れば廃止します。

 

  1. どうやって計算しますか。 A. 距離制の場合、「走行距離(km)÷ 燃費(km/L)× 算出上の燃料価格上昇額(円/L)」で算出します。時間制の場合は走行距離に代えて平均走行距離を用います。

 

  1. 基準価格はどう決めればよいですか。 A. 国土交通省のガイドラインは、運賃届出時点の燃料価格を基準とする方法と、荷主と運賃契約を交わした時点の燃料価格を基準とする方法の2つを示しています。

 

  1. 届出は必要ですか。 A. 必要です。燃料サーチャージを設定・変更した場合、貨物自動車運送事業報告規則第2条の2の規定により、30日以内に運賃料金設定(変更)届出書を地方運輸支局等へ提出します。

 

  1. 荷主が燃料費の転嫁に応じてくれません。 A. 国土交通省は、燃料費の上昇分の反映を求めたにもかかわらず不当に据え置くことは独占禁止法違反(買いたたき)等になるおそれがあり、改正貨物自動車運送事業法に基づく荷主への働きかけ・要請・勧告等の対象にするとしています。全国に相談窓口が設置されています。

 

  1. 同業他社と足並みを揃えて導入してもよいですか。 A. 避けてください。個々の事業者が個別に決定すること自体は独占禁止法上の問題は生じませんが、事業者間または事業者団体で合意・決定すれば独占禁止法上問題となるとされています。

 

  1. 燃料価格が下がったらどうなりますか。 A. 設定時点より下落した場合は下落幅に応じて減額改定し、基準とする燃料価格を下回った場合は廃止します。改定・廃止の条件は設定時に荷主へ明確に示しておく必要があります。

 

関連用語

 

参考・出典

 

※本記事は2026年7月時点の情報です。標準的な運賃の算定前提となる燃料価格は改定により見直されるため、最新の告示・全日本トラック協会の資料をご確認ください。

 

 

 

 

物流・運送業の社長様をトータル支援

運送・物流業界に特化した経営のプロとして、
貴社の人材確保と業務効率化を総合的にサポートします。