運行三費とは?計算方法と運賃交渉への使い方を解説 | 運送社長支援

運行三費

読み方:うんこうさんぴ

 

運行三費とは、燃料油脂費・修理費・タイヤチューブ費の3つを指す運送業の費用区分です。いずれも走行距離に比例して発生する変動費であり、「運行費」とも呼ばれます。

 

近年はディーゼル車に必要な尿素水費を加えて扱うのが一般的です。

 

運行三費の内訳

国土交通省の資料では、運行費(運行三費)の内容が次のように整理されています。

 

費目含まれるもの
燃料費・油脂費燃料、エンジンオイル(※ミッションオイル等は修理費に含める)
修理費一般修理、車検整備、定期点検 等
タイヤチューブ費タイヤチューブ、交換工賃
尿素水費ディーゼルエンジンに必要な尿素水(AdBlue等)

 

ポイントは、これらがすべて走行距離に比例するという点です。車両を止めていれば発生せず、走れば走るほど増えます。この性質を理解することが、原価管理の出発点になります。

 

運送原価に占める割合

全日本トラック協会の経営分析報告書によれば、トラック運送業の費用構成は人件費が最も大きく約4割を占め、次いで燃料油脂費が1割台、修繕費・減価償却費が続きます。

 

人件費と運行三費だけで、費用の過半を占める構造です。とりわけ燃料油脂費は市況の影響を直接受けるため、単価が上がれば利益が即座に圧迫されます。

 

なお構成比は年度により変動するため、自社の数値と業界平均を比較する際は、参照した報告書の年度を必ず確認してください。

 

運行三費の計算方法

原価計算では、すべて「1km当たり」に換算します。月次の実額のままでは、走行距離が違う車両同士を比較できないためです。

燃料費

① 平均燃料単価 ÷ 燃費 = 1km当たりの燃料費

 

② 1km当たりの燃料費 × 走行距離 = 燃料費

 

  • 平均燃料単価は消費税抜きで処理します
  • 燃費は運行条件で変動するため、年間の平均燃費を採用します
  • 自社の燃料単価の把握が難しい場合は、公開されている燃料単価を利用します
  • 軽油・ガソリン・CNG等、燃料種ごとに単価を算出します

油脂費

① 1回当たりのオイル必要量 × オイル単価 + オイルフィルター + 交換工賃

 

   = 1回当たりの油脂費

 

② 1回当たりの油脂費 ÷ 交換走行距離 = 1km当たりの油脂費

 

油脂費に含めるのはエンジンオイルのみで、ブレーキオイルやミッションオイルは修理費に含めます。

タイヤチューブ費

(タイヤチューブ費 + 交換工賃等一式) ÷ 交換走行距離

 

= 1km当たりのタイヤチューブ費

 

ここが実務上の落とし穴です。

 

通常の経理では、タイヤを交換した月にその費用を全額計上します。しかしこれでは交換した月だけコストが大きく、交換しない月は小さくなり、月次の採算が歪みます。

 

国土交通省の資料も「交換した月のみに費用を発生させることは不適切」と明記しています。タイヤ費は交換までの走行距離で按分し、計算対象期間の走行距離分だけを費用計上してください。

 

夏タイヤと冬タイヤを併用する場合は、単価の違いを考慮して加重平均を算出することもあります。

修理費

(車検整備費 + 一般修理費の合計額) ÷ 走行距離

 

= 1km当たりの修理費

 

修理費も計上月によって大きく変動するため、次のいずれかを採用します。

 

  • ① 過去3年の修理費の合計額 ÷ 過去3年間の走行距離
  • ② 今期の予想修理費 ÷ 今期の予想走行距離

 

車検整備費は固定費として扱われることもありますが、正確には走行距離に応じて増減するため、走行距離で割るのが適切です。リース料金に修理費が含まれている場合は、該当する金額を抜き出して処理します。

尿素水費

尿素水1リットルあたりの走行距離は50〜200km程度が目安とされています。

 

(尿素水の必要量 × 単価)÷ 交換走行距離

 

+(フィルター + 交換工賃)÷ 交換走行距離

 

= 1km当たりの尿素水費

 

実車率を考慮しなければ、原価は正しく出ない

運賃を正確に計算しても、それだけでは適正運賃は出ません。

 

国土交通省の資料は次のように明示しています。

 

適正な運賃水準の算出では「実車率」を考慮して妥当な原価計算を行う必要があります。例えば実車率60%の場合、実車6割、空車4割となり、空車4割分は運賃収受できず、原価のみを要する運行となります。この場合は空車分の原価も含めて利益計上する必要があるため、実車率の逆数をかけて適切運賃水準の基礎となる原価を算出します。

 

実車率60%の場合 ⇒ ルート別原価 × (100 ÷ 60)

 

つまり実車率60%なら、原価に約1.67倍を掛けた水準でなければ、空車回送分を回収できません。

 

自社の原価をそのまま提示して交渉している会社は、構造的に赤字を受け入れている可能性があります。

 

1時間当たり固定費と1km当たり変動費

原価計算の実務では、費用を2つの原単位に整理します。

 

原単位計算式含まれる費目
1時間当たりの固定費固定費合計 ÷ 稼働時間車両費(減価償却)、税金、保険、運転者人件費、間接費
1km当たりの変動費各変動費 ÷ 走行距離運行三費、尿素水費

 

運行ルート別の原価は、この2つを組み合わせて算出します。

 

1時間当たり固定費 × 平均稼働時間

 

+ 1km当たり変動費 × 平均走行距離

 

+ 料金・実費等(高速道路利用料、フェリー利用料、燃料サーチャージ、

 

        附帯作業費、車両留置料、宿泊費用 等)

 

待機時間や附帯作業の時間も、1時間当たり固定費が発生し続けているという点が重要です。荷待ちは「何もしていない時間」ではなく、原価が発生し続けている時間です。

 

経営者が押さえるべきポイント

① 原価計算をしている会社ほど、交渉している

 

国土交通省が実施したアンケート(平成28年11月、N=1,200)では、約6割の事業者が何らかの原価計算を実施しており、原価計算を実施している事業者ほど、荷主との契約条件の見直し交渉にあたっているという結果が示されています。

 

同資料は「原価計算は荷主との契約交渉に向けた第一歩」と位置づけています。

 

② 実際に成果が出ている

 

同じ資料に掲載された事例からは、具体的な成果が読み取れます。

 

  • 1990年から現在までの原価データを個別に示し、17%の引上げ要請に対して満額の引上げを実現。荷主から「数字を出して交渉してきたところは初めてだ」というコメントを得た
  • 赤字取引先を特定して見直しを要請し、引上げに応じない取引先とは取引解消も辞さない方針を取った結果、過去3年でドライバー賃金を平均10%引き上げ、営業利益率5%以上を達成
  • 1km当たり原価・1時間当たり原価を提示し、労働法制や荷主責任などコンプライアンス関連の事項をあわせて説明することで、価格交渉の成功率を20%向上

 

共通するのは、感情ではなく数字で話しているという一点です。

 

③ 交渉ではデータの「見せ方」が効く

 

同資料の事例では、原価計算データのすべてを共有する必要はなく、燃料価格・燃費・ドライバーの労働時間といった基礎データを示すだけで荷主の理解が得られたという声が挙がっています。

 

また、「料金を上げてほしい」とは言わず、赤字運行となっているルートの説明や、運行時・附帯作業時の写真を見せながら、イメージが浮かぶよう丁寧に説明することが有効とされています。

 

④ 燃料サーチャージの根拠になる

 

燃料油脂費を1km当たりで把握していれば、燃料価格の上昇額が1km当たりいくらのコスト増になるかを即座に示せます。これが燃料サーチャージ収受の根拠です。

 

2024年3月改定の標準的な運賃でも、燃料サーチャージは運賃とは別に収受すべき費用として整理されています。運送契約締結時の書面交付義務でも、「その他特別に生ずる費用に係る料金(例:高速道路利用料、燃料サーチャージ等)」は法定記載事項です。

 

⑤ 傭車と実運送を区分する

 

原価計算の手順では、まず実運送の売上・費用と傭車(利用運送)の売上・費用を区分することとされています。傭車は受注先・発注先別に原価を計算します。

 

傭車費が実運送の原価に混ざったままでは、どの車両が儲かっているのか、どの荷主が赤字なのかが見えません。

 

⑥ 全ト協の原価計算シートを使う

 

全日本トラック協会は、必要なデータを入力するだけで原価計算ができるシートを会員向けに提供しています。都道府県トラック協会でも原価計算セミナーが随時開催されています。ゼロから仕組みを作る必要はありません。

 

よくある質問

  1. 運行三費とは何ですか。 A. 燃料油脂費・修理費・タイヤチューブ費の3つを指します。いずれも走行距離に比例して発生する変動費です。近年はディーゼル車に必要な尿素水費を加えて扱うのが一般的です。

 

  1. なぜ1km当たりで計算するのですか。 A. 走行距離が異なる車両同士を比較するためです。月次の実額のままでは、よく走った車両のコストが大きく見えるだけで、効率の良し悪しが判断できません。

 

  1. タイヤ費は交換した月に全額計上してよいですか。 A. 適切ではありません。国土交通省の資料も「交換した月のみに費用を発生させることは不適切」としています。交換までの走行距離で按分し、対象期間の走行距離分だけを費用計上してください。

 

  1. 原価がわかれば適正な運賃を出せますか。 A. 実車率の考慮が必要です。実車率60%であれば空車4割分は運賃を収受できないため、原価に実車率の逆数(100÷60=約1.67)を掛けた水準が、適正運賃の基礎となります。

 

  1. 車検整備費は固定費ですか、変動費ですか。 A. 固定費として扱われることもありますが、正確には走行距離に応じて増減するため、走行距離で割って1km当たりの修理費として計算するのが適切です。

 

  1. 原価計算は難しくありませんか。 A. 全日本トラック協会が会員向けに原価計算シートを提供しており、必要なデータを入力するだけで計算できます。各都道府県トラック協会でセミナーも随時開催されています。

 

関連用語

 

参考・出典

  • 国土交通省「原価計算の活用に向けて(トラック運送の原価計算の活用に向けて)」 https://www.mlit.go.jp/common/001185829.pdf
  • 国土交通省「トラック運送業における原価計算に関するアンケート」(平成28年11月)
  • 全日本トラック協会「経営分析報告書」 https://jta.or.jp/member/keiei/keiei_bunseki.html
  • 全日本トラック協会「原価計算セミナーテキスト」「標準的な運賃活用セミナーテキスト」
  • 国土交通省「トラック運送事業者のための価格交渉ノウハウ・ハンドブック」

 

※本記事は2026年7月時点の情報です。原価構成比等の統計値は年度により変動します。

 

 

 

 

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