巡回指導とは?38項目の評価とD・E評価のリスクを解説 | 運送社長支援

巡回指導 / 適正化事業実施機関

読み方:じゅんかいしどう/てきせいかじぎょうじっしきかん

 

巡回指導とは、貨物自動車運送適正化事業実施機関が、トラック運送事業者の営業所を訪問し、法令の遵守状況を確認・指導することです。適正化事業実施機関とは、この事業を担う機関で、各都道府県のトラック協会が国土交通大臣の指定を受けて実施しています。

 

適正化事業実施機関とは

貨物自動車運送事業法に基づき、輸送の安全確保と事業の健全な発達を図るために設けられた機関です。国土交通大臣が全国実施機関として全日本トラック協会を、都道府県実施機関として各都道府県トラック協会を指定しています。

 

行政(運輸支局)そのものではありません。業界団体が公的な役割を担い、事業者を「取り締まる」のではなく「指導する」立場にあります。この違いが、後述する監査との決定的な差になります。

 

Gマーク(安全性優良事業所)の認定も、この適正化事業実施機関が担っています。

 

巡回指導の頻度

事業開始後、まず新規事業者に対しては開始からおおむね3か月以内に巡回指導が行われます。その後は評価に応じて頻度が変わります。

 

総合評価おおむねの頻度
A・B3〜4年に1回
C2年に1回程度
D・E半年に1回(令和5年度から重点化)

 

評価が低い事業所ほど、頻繁に見に来られる仕組みです。令和5年度以降、総合評価がD・E評価となった事業所は重点化され、半年に1回の巡回指導が実施されるようになりました。

 

38の指導項目

巡回指導では、38の指導項目を確認します。項目は7つのカテゴリに分かれています。

 

カテゴリ項目数(目安)主な確認内容
事業計画等8登記・許可・変更認可、営業所・車庫・車両の実態との整合
帳簿類の整備・報告5事業報告書・事業実績報告書の提出、運賃料金の届出
運行管理13点呼の実施と記録、乗務記録(運転日報)、運行記録計、運転者台帳、指導監督、適性診断
車両管理5整備管理者の選任、日常点検、定期点検
労基法等4就業規則、36協定、改善基準告示の遵守
法定福利費2社会保険・労働保険の加入
運輸安全マネジメント1安全方針の周知等

 

運行管理の13項目が最も多く、点呼・乗務記録・運転者台帳・適性診断といった、日常業務の記録がそのまま問われます。

 

評価区分(A〜E)

38項目それぞれを「適」か「否」で判定し、「適」の占める割合で総合評価が決まります。

 

総合評価「適」の割合
A高い
B
C
D60%以上70%未満
E60%未満

 

(※A〜Cの具体的な区分は実施機関の基準によります。D・Eの基準は神奈川県適正化事業実施機関の公表値です)

重点項目に「否」があると1段階引き下げ

ここが最も重要なルールです。

 

38項目のうち一部は重点指導項目に指定されており、重点指導項目にひとつでも「否」がある場合は、総合評価が1段階引き下げられます。

 

つまり、他の項目がすべて「適」でも、重点項目を1つ落とすだけで評価が下がります。重点項目には点呼の実施、乗務記録、運転者台帳、適性診断など、安全に直結する記録が含まれます。

 

(重点指導項目の数・内容は改正されることがあります。最新の項目は所属する都道府県トラック協会の資料でご確認ください)

 

巡回指導と監査の違い

混同されやすい2つですが、実施主体も、結果の重さもまったく異なります。

 

巡回指導監査
実施主体適正化事業実施機関(トラック協会)運輸支局(行政)
性格指導・助言法令違反の確認
行政処分の可能性ほぼない(是正報告で足りる)高い(特別監査ではほぼ確実)
事前通知原則ありある場合とない場合がある

 

巡回指導で未実施事項が見つかっても、是正して報告すれば、それ自体で行政処分になることは基本的にありません。指導の場だからです。

 

しかし、巡回指導は監査の入口になり得ます。

 

D・E評価が招く監査強化

令和5年3月28日付で「トラック事業者の法令順守の徹底を図るための措置について」の通達が改正され、巡回指導の総合評価がD・E評価となった事業者に対する行政の監査が強化されました。

 

具体的には、次のような事業者が監査強化の対象とされています。

 

  • 巡回指導の総合評価がD・E評価で、改善結果報告を提出しない事業者
  • 巡回指導の総合評価が3回連続D・E評価の事業者
  • 過去3回の巡回指導の総合評価がE評価の事業者

 

巡回指導そのものは処分に直結しませんが、悪い評価を放置すると、処分に直結する監査を呼び込みます。巡回指導は「行政に見られる前の、最後の警告」と捉えるのが正確です。

 

経営者が押さえるべきポイント

① 巡回指導は「予告された監査リハーサル」

 

原則として事前に通知があり、確認項目も公開されています。適正化事業実施機関は、確認項目を網羅した自主点検チェックシートを提供しています。

 

つまり、何を見られるか事前にわかっている試験です。ここで落とすということは、日常の記録が回っていないということに他なりません。

 

② 落ちるのは「知識」ではなく「運用」

 

38項目の大半は、点呼記録・乗務記録・運転者台帳・適性診断・点検記録といった日々の記録です。制度を知らないから落ちるのではなく、記録が習慣化していないから落ちます。

 

逆に言えば、日常業務の中に記録が組み込まれていれば、巡回指導は恐れる対象ではありません。

 

③ 是正報告を出さないのが最悪手

 

巡回指導で未実施事項を指摘されても、是正して報告すれば処分にはなりません。ところがD・E評価で改善結果報告を提出しない事業者は、監査強化の対象に明記されています。

 

指摘されること自体より、指摘を放置することのほうがはるかに危険です。

 

④ Gマークとつながっている

 

Gマークの評価は、この巡回指導の結果(法令遵守状況)を基礎の一つとしています。日常の記録が整い、巡回指導で高評価を取れる状態は、そのままGマーク取得の土台になります。別々の対応ではなく、同じ管理体制の話です。

 

⑤ 事務が回らないなら仕組みで解く

 

点呼記録、日報、運転者台帳、指導監督記録、適性診断の管理。これらが属人的な手作業のままだと、繁忙期に抜けが生じ、それが巡回指導で「否」になります。

 

IT点呼・遠隔点呼、デジタコによる記録の自動化、記録管理の外部委託は、いずれも巡回指導対策として有効です。

 

よくある質問

  1. 巡回指導とは何ですか。 A. 貨物自動車運送適正化事業実施機関(各都道府県トラック協会)が、トラック運送事業者の営業所を訪問し、38の指導項目について法令の遵守状況を確認・指導することです。

 

  1. 巡回指導で行政処分を受けますか。 A. 基本的に受けません。巡回指導は指導・助言の場であり、未実施事項が見つかっても是正して報告すれば処分にはなりません。ただし、D・E評価を放置すると運輸支局による監査が強化されます。

 

  1. 巡回指導と監査は何が違いますか。 A. 巡回指導は適正化事業実施機関(トラック協会)が行う指導、監査は運輸支局(行政)が行う法令違反の確認です。監査、特に特別監査では行政処分に至る可能性が高くなります。

 

  1. 評価がD・Eだとどうなりますか。 A. 巡回指導が半年に1回に増えます。さらに改善結果報告を提出しない、3回連続でD・E評価、過去3回がE評価といった場合、運輸支局による監査強化の対象となります。

 

  1. どんな項目が確認されますか。 A. 事業計画、帳簿類、運行管理、車両管理、労基法等、法定福利費、運輸安全マネジメントの7カテゴリ38項目です。特に運行管理(点呼、乗務記録、運転者台帳、適性診断など)が最も多く確認されます。

 

  1. 事前に準備できますか。 A. できます。原則として事前通知があり、確認項目も公開されています。適正化事業実施機関が提供する自主点検チェックシートを活用して、日頃から記録を整えておくことが有効です。

 

関連用語

 

参考・出典

  • 神奈川県貨物自動車運送適正化事業実施機関「巡回指導の総合評価がD・E評価事業者に対する行政の監査強化について」 https://www.kana-tekisei.jp/info/laws/1643/
  • 国土交通省「トラック事業者の法令順守の徹底を図るための措置について」(通達、令和5年3月28日一部改正)
  • 全日本トラック協会「適正化事業」 https://jta.or.jp/

 

※本記事は2026年7月時点の情報です。指導項目・重点項目・評価基準は改正される場合があります。最新の情報は所属する都道府県トラック協会でご確認ください。

 

 

巡回指導は、予告された試験です。落ちる理由は「知識」ではなく「記録」。 点呼、日報、運転者台帳、指導監督記録。日々の記録が回っていれば、巡回指導もGマークも恐れる対象ではありません。運送・物流業界に特化した経営のプロが、記録体制についてお困りごとがあればお気軽にご相談ください。 [無料相談する]

 

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