モーダルシフトとは?政府目標と運送会社への影響を解説 | 運送社長支援

モーダルシフト

読み方:もーだるしふと 英語表記:Modal Shift

 

モーダルシフトとは、トラックによる貨物輸送を、鉄道や船舶といった大量輸送機関へ転換することです。環境負荷の低減と、ドライバー不足への対応を目的としています。

 

「モーダル(modal)」は輸送手段を意味する modality に由来します。

 

なぜ推進されているのか

① 環境負荷の低減

2024年度における日本の二酸化炭素排出量9億7,148万トンのうち、運輸部門からの排出量は1億8,719万トンで19.3%を占めます。このうち自動車全体が運輸部門の85.6%、貨物自動車だけで運輸部門の37.8%(日本全体の7.3%)を排出しています。

 

輸送量あたりで比較すると差は明確です。国土交通省は、貨物鉄道輸送の輸送単位あたりの二酸化炭素排出量は営業用トラックの約10分の1としています。船舶もトラックを大きく下回ります。

 

同じ量の貨物を同じ距離運んでも、手段を変えれば排出量が大きく変わる。これがモーダルシフトの環境面の論拠です。

② ドライバー不足と労働時間規制

環境問題以上に切実なのが、輸送力の確保です。

 

2024年4月からドライバーの時間外労働に年960時間の上限が適用され、改善基準告示も拘束時間の上限を引き下げました。長距離のトラック輸送を維持すること自体が難しくなっています。

 

1人のドライバーが東京から福岡まで運ぶ運行は、もはや制度的に成立しにくい。その区間を鉄道や船舶に載せ替えれば、トラックは両端の集配に専念できます。

 

政府の目標

令和5年10月6日に閣議決定された「物流革新緊急パッケージ」では、次の目標が掲げられています。

 

鉄道(コンテナ貨物)、内航(フェリー・RORO船等)の輸送量・輸送分担率を今後10年程度で倍増

 

貨物鉄道については、2030年代前半に3,600万トンへの倍増が目標とされています。

 

このほか、関連する政府計画では次の指標が設定されています。

 

計画指標
総合物流政策大綱(令和3年6月15日閣議決定)鉄道による貨物輸送トンキロ:2019年度184億トンキロ → 2025年度209億トンキロ
地球温暖化対策計画(令和3年10月22日閣議決定)鉄道貨物輸送量:2013年度193.4億トンキロ → 2030年度256億トンキロ

31ftコンテナが鍵

推進策の中心に置かれているのが31ftコンテナです。大型トラック1台分の輸送量に相当し、10トントラックからの積替えが容易であるため、その取扱い拡大が優先的に促進されています。中長期的には40ftコンテナの利用拡大も進められる方針です。

 

あわせて、大型コンテナを扱うための貨物駅の施設整備(コンテナホームの拡幅等)や、荷役機器の導入支援が行われています。

 

目標と現実のギャップ

一方で、実態は目標どおりには進んでいません。

 

JR貨物のコンテナ輸送量は、平成29年度の2,243万トンから令和5年度には1,811万トンへと減少しています。積載率も76.4%から70.0%へ低下しました。

 

2030年代前半に3,600万トンという目標に対し、足元では約1,800万トン。しかも増加ではなく減少傾向にあります。

 

この差が、モーダルシフトを語るうえで最も重要な事実です。「国が推進しているから進む」という前提で事業計画を立てるべきではありません。

 

モーダルシフトが進まない理由

課題内容
リードタイム鉄道・船舶はダイヤが固定され、拠点間輸送に時間がかかる。翌日納品が前提の取引では選択肢に入らない
ロットコンテナ単位・船腹単位でまとめる必要があり、小口・多頻度の貨物には向かない
拠点の制約貨物駅・港湾までの距離が遠いと、集配のコストと時間が増える
定時性・災害リスク単線区間の不通や天候による欠航で、輸送が長期間止まるリスクがある
荷役の追加積替えが発生するため、荷姿の対応(パレット化等)と破損リスクへの備えが必要

 

災害リスクへの対応として、国土交通省は代行輸送の拠点となる貨物駅の施設整備や、JR貨物・荷主・利用運送事業者・関係自治体等によるBCP策定の協議の場の立ち上げを進めています。

 

荷主の努力義務としての位置づけ

2025年4月から施行された改正物流効率化法では、荷主の判断基準(省令)に次の内容が明記されています。

 

貨物の運送を委託する際は、モーダルシフト等により、輸送される物資の貨物自動車への過度の集中の是正に努めること

 

つまりモーダルシフトは、荷主にとって「やってもよい取組」ではなく、制度上取り組むべき事項として位置づけられました。

 

運送会社の経営者が押さえるべきポイント

① モーダルシフトは「仕事を奪われる話」ではない

 

長距離輸送が鉄道や船舶に移れば、自社の売上が減るのではないか。中小運送事業者の間には、そうした警戒があります。

 

しかし実態は異なります。鉄道も船舶も、駅から駅、港から港までしか運べません。荷主の工場から貨物駅までの集荷、到着駅から納品先までの配送は、必ずトラックが担います。

 

この両端の輸送をドレージと呼びます。モーダルシフトが進むほど、貨物駅・港湾周辺での集配需要は増えます。長距離幹線を失う代わりに、拠点周辺の短距離輸送が生まれるという構造です。

 

自社の営業エリアに貨物駅や港湾があるなら、これは脅威ではなく機会です。

 

② 長距離幹線に依存している会社は、構造転換の検討が必要

 

一方で、長距離幹線輸送を主力にしている事業者にとっては、実際に逆風になり得ます。ただし前述のとおり目標と実態には大きな差があり、急激な移行は起きていません。

 

慌てて事業を転換する必要はありませんが、次の準備は進めておくべきです。

 

  • 中継輸送による長距離運行の分割(同じ課題への別解)
  • 拠点周辺の集配案件の開拓
  • 荷主に対する「鉄道+ドレージ」の複合提案

 

③ 荷主への提案材料として使える

 

荷主にはモーダルシフト等による貨物自動車への過度の集中の是正が努力義務として課されています。しかし多くの荷主は、具体的にどう進めればよいか分かっていません。

 

「この区間は鉄道に載せ、両端は当社が請けます」という提案ができる運送会社は強い。単に運ぶだけの業者から、輸送設計のパートナーへ立ち位置を変えられます。

 

ただしこの提案には、リードタイムの見直しが前提になります。荷主の判断基準には「適切なリードタイムの確保」も明記されているため、セットで交渉できる論点です。

 

④ 環境対応が受注条件になりつつある

 

上場企業を中心に、サプライチェーン全体のCO2排出量(Scope3)の把握と削減が求められています。荷主が委託先を選ぶ際、環境負荷の低い輸送を提案できるかが評価対象になる場面が増えています。

 

CO2排出量を算定・提示できる体制は、いずれ標準的な要件になる可能性があります。

 

よくある質問

  1. モーダルシフトとはどういう意味ですか。 A. トラックによる貨物輸送を、鉄道や船舶といった大量輸送機関へ転換することです。環境負荷の低減とドライバー不足への対応を目的としています。

 

  1. どのくらいCO2削減効果がありますか。 A. 国土交通省は、貨物鉄道輸送の輸送単位あたりの二酸化炭素排出量は営業用トラックの約10分の1としています。船舶もトラックを大きく下回ります。

 

  1. 政府はどのような目標を掲げていますか。 A. 令和5年10月閣議決定の「物流革新緊急パッケージ」で、鉄道(コンテナ貨物)と内航(フェリー・RORO船等)の輸送量・輸送分担率を今後10年程度で倍増する方針が示されています。貨物鉄道は2030年代前半に3,600万トンが目標です。

 

  1. なぜモーダルシフトは進まないのですか。 A. リードタイムが長くなること、コンテナ単位のロットが必要なこと、貨物駅・港湾までの距離、災害や不通による定時性のリスク、積替えに伴う荷役と破損リスクなどが主な要因です。実際、JR貨物のコンテナ輸送量は平成29年度の2,243万トンから令和5年度は1,811万トンへ減少しています。

 

  1. モーダルシフトが進むと、トラック運送の仕事は減りますか。 A. 幹線輸送は減る可能性がありますが、鉄道も船舶も駅間・港間しか運べません。荷主から貨物駅までの集荷、到着駅から納品先までの配送(ドレージ)は必ずトラックが担うため、拠点周辺の集配需要はむしろ増えます。

 

  1. 31ftコンテナとは何ですか。 A. 大型トラック1台分の輸送量に相当するコンテナです。10トントラックからの積替えが容易であることから、国土交通省が利用拡大を優先的に促進しています。

 

関連用語

 

参考・出典

 

※本記事は2026年7月時点の情報です。統計値および政府目標は更新される場合があります。

 

 

 

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