中継輸送とは?3つの方式と協定書・保険の実務を解説 | 運送社長支援

中継輸送

読み方:ちゅうけいゆそう

 

中継輸送とは、長距離・長時間に及ぶ運行において、運行途中の中継地点で他の運転者と乗務を交替する輸送形態です。一つの行程を一人で担うのではなく、複数人で分担する働き方を指します。

 

泊まりを伴う長距離運行を分割することで、各ドライバーが日帰りで勤務できるようになります。

 

なぜ中継輸送が推進されているのか

トラック運送業で働く人は中高年層の男性が中心で、このままでは深刻な労働力不足に陥ることが懸念されています。その一因が「厳しい労働環境」、とりわけ泊まりを伴う長距離運行です。

 

2024年4月から適用されている改善基準告示では、1日の拘束時間は原則13時間以内(上限15時間)、休息期間は継続9時間を下回らないこととされています。長距離運行では、この基準を満たす運行計画を組むこと自体が難しくなります。

 

中継輸送は、この構造に対する直接的な解決策です。運行を分割すれば、各ドライバーは日帰りで自宅に帰れます。拘束時間が抑制され、採用面でも定着面でも効果が期待できます。女性ドライバーや高齢ドライバーの活躍にもつながります。

 

国土交通省は平成27〜28年度に実証実験モデル事業を実施し、その成果をもとに「中継輸送の実施に当たって(実施の手引き)」や取組事例集を公表しています。

 

中継輸送の3つの方式

異なるトラック事業者同士で行う中継輸送には、代表的に3つの方式があります。

 

方式内容中継拠点での作業時間留意点
A:トレーラー・トラクター方式中継拠点でトラクター(けん引車)を交換する短いけん引免許を持つ運転者同士で行う必要がある。ヘッドとシャーシが連結可能か、拠点に十分な敷地があるかの事前確認が必要
B:貨物積替え方式中継拠点で貨物を積み替える長いパレタイズ化による時間短縮、荷役作業員や設備の確保が課題。積替え中の貨物破損時の対応も事前に取り決めが必要
C:ドライバー交替方式中継拠点で車両はそのままに、ドライバーが交替する短い単車での実施が可能。他社の車両を運転することになる

 

国土交通省の手引きは、事業者から「実施したい」という声が最も多かったパターンC:ドライバー交替方式を中心にまとめられています。単車で実施でき、拠点での作業も短時間で済むためです。

 

異なる事業者間で行う場合に必要な措置

結論から言えば、異なるトラック事業者同士でドライバー交替方式の中継輸送を実施することは、法制的に問題ありません。

 

ただし、次の2つの措置が必要です(国土交通省通達「貨物自動車運送事業の用に供する事業用自動車の相互使用について」平成9年7月1日付、平成19年一部改正)。

① 事業者間で協定書等を締結する

協定書等で定めておくべき事項は次のとおりです。

 

  1. 運行区間および運転者の交代する場所
  2. 相互使用の対象となる事業用自動車が配置されることとなる営業所
  3. 相互使用の対象となる事業用自動車の当該営業所ごとの車両数
  4. 相互使用の対象となる事業用自動車の自動車登録番号
  5. 運行管理、車両管理および事故の処理についての相互の責任関係
  6. 損害賠償に関する事項

 

国土交通省の手引きでは、さらに実務的な条項例として、中継輸送実施の目的、車両の受け渡し方法、車両整備の責任、引渡し時の整備責任、事故発生時の報告責任、車両使用料の取り扱い、契約期間などを挙げています。

② 車両に「表板」を掲示する

相互使用の対象となる事業用自動車には、事業者名および運行区間等を記載した表板を、助手席側の前面に外側から見やすいように置く必要があります。

 

見落とされやすい要件ですが、通達に明記された措置です。

 

運行管理と点呼の扱い

実務上、最も疑問が多いのがこの点です。

 

原則として、運行管理は事業用自動車が配置された営業所が行います。

 

国土交通省の手引きでは、中継拠点における点呼の扱いについて、「中継拠点においては、車両の乗り換え後の運行について予め運行指示を受けており、休息期間を挟まないなど乗務を終了しなければ、改めて点呼を実施する必要はありません」と説明されています。

 

一方、運転者が車両を乗り換えることで運行管理を行う営業所が変わる場合には、それぞれの営業所から乗務終了・開始の点呼を実施する必要があります。点呼は対面が望ましいものの、中継地で乗務を開始・終了するなど運行上やむを得ない場合には、電話等による点呼が認められます。

 

制度の適用は、同一事業者内で行うか、Gマーク営業所同士か、異なる事業者間かによって必要な措置が異なります。導入前に国土交通省の「中継輸送に関するQ&A」を確認し、所轄の運輸支局に相談することをおすすめします。

 

中継拠点の選び方

立地は「距離の中間」ではなく「運行時間の中間」

拠点選定には2つの考え方があります。

 

  • ① 距離の中間を考える
  • 運行時間の中間を考える

 

国土交通省の手引きは②の重要性を指摘しています。たとえば東北と関東の間で運行する場合、距離の中間点に拠点を設けても、雪道を走る東北発と雪のない道を走る関東発では、拠点到着までの所要時間が大きく異なるためです。

設備も選定要因

駐車スペースのあるガソリンスタンドやトラックステーションなどが候補になりますが、駐車場が混み合う時間帯といった事情もあるため、十分な話し合いが必要です。

 

また、女性用トイレやシャワー等の休憩施設は、女性ドライバーの活躍を考えるうえで重要な選定要因になります。

内回りと外回り

考え方内容留意点
内回り中継拠点を起点として幹線を運行トレーラー・トラクター方式でシャーシプールとして拠点を使う場合に適する。拠点の営業所に所属する運転者の確保が必要
外回り積み地を起点として幹線を運行拠点で双方の幹線が落ち合う形。相手の幹線が遅れると、自社の車両も到着まで待機することになる

 

見落とされがちな「保険」の問題

ここが実務上、最大の落とし穴です。

 

ドライバー交替方式では、他社の車両を運転することになります。では、相手事業者の車両を運行中に起こした対人・対物賠償事故を補償する保険はあるのでしょうか。

 

国土交通省の手引きは、「残念ながら、現時点ではそのような保険はありません」と明記しています(同手引きは平成29年3月時点のもの)。

 

実務上の対応は、相手事業者が加入している任意保険を使わせてもらうという形になります。事前に協定書を締結して車両利用を承諾しているため、運転者は「許諾被保険者」として扱われるためです。

 

ただし注意点が2つあります。

 

  • 相手の任意保険に「自社運転者従業員限定特約」等が付いている場合、補償の対象外となる可能性があります
  • 相手の保険を使った場合、相手事業者の保険料率が上がる可能性があります

 

この点を事前に詰めずに中継輸送を始めると、事故発生時に事業者間の関係が壊れます。手引きも、話し合いには加入している損保会社の担当者に同席してもらうことを推奨しています。

 

経営者が押さえるべきポイント

① 中継輸送は「相手選び」が9割

 

自社だけでは成立しない取り組みです。相手事業者の安全管理体制、任意保険の内容、車両の状態、そして何より運行を守る規律。これらが自社と釣り合わなければ、リスクだけを引き受けることになります。

 

選定にあたっては、Gマーク(安全性優良事業所)の取得状況が客観的な指標のひとつになります。

 

② 協定書を「作って終わり」にしない

 

協定書には運行管理・車両管理・事故処理の責任関係、損害賠償の範囲を定めます。これは形式要件であると同時に、トラブル発生時に自社を守る唯一の文書です。

 

国土交通省の手引きは、「何か起こったら」の「何か」をできるだけ想定し、事象ごとの対応ルールを事前に決めておくことを勧めています。事故、貨物の破損(積込時・拠点・荷卸時・運行中)、積載貨物の忘れ、運行の遅延。同じ事象でも、中継拠点の到着前か到着後かで対応が変わります。

 

③ 荷主との調整が前提になる

 

中継拠点で双方のドライバーが落ち合うタイミングを合わせるため、発荷主での積込時間や着荷主での荷卸時間の変更が必要になる場合があります。

 

ここは交渉の余地があります。改正物流効率化法では、荷主の努力義務として「適切なリードタイムの確保」が判断基準に明記されており、モーダルシフト等により貨物自動車への過度の集中を是正することも求められています。中継輸送はこの文脈に乗る提案です。

 

④ 荷役の契約内容を事前に確認する

 

ドライバー交替方式では、相手事業者のドライバーが着荷主へ荷卸しに行きます。着荷主との契約でドライバーによる荷卸作業が含まれている場合、相手事業者のドライバーに荷扱いを事前に教えておく必要があります。受付場所や荷卸場所の引継ぎも必須です。

 

⑤ 帰り荷の確保という副次効果

 

中継輸送を行う2事業者について、それぞれ定量的な貨物がある者同士がペアリングされることで、帰り荷が安定的に確保され、空車回送がなくなるという効果も期待できます。実車率の改善に直結します。

 

よくある質問

  1. 異なる会社同士で中継輸送をしても法律上問題ありませんか。 A. 問題ありません。ただし、事業者間で責任関係等について事前に協定書等を締結すること、および事業者名・運行区間等を記載した表板を車両の助手席側前面に掲示することが必要です。

 

  1. 中継輸送にはどんな方式がありますか。 A. 代表的に3つあります。トレーラー・トラクター方式(拠点でトラクターを交換)、貨物積替え方式(拠点で貨物を積み替え)、ドライバー交替方式(拠点でドライバーが交替)です。単車で実施でき拠点作業も短時間で済むドライバー交替方式が最も要望が多い方式です。

 

  1. 中継拠点で点呼は必要ですか。 A. 車両の乗り換え後の運行について予め運行指示を受けており、休息期間を挟まないなど乗務を終了しない場合は、改めて点呼を実施する必要はありません。ただし運行管理を行う営業所が変わる場合には、それぞれの営業所から乗務終了・開始の点呼が必要です。

 

  1. 他社の車両を運転中に事故を起こしたら、保険はどうなりますか。 A. 相手事業者の車両を運行中の事故を補償する専用の保険は、国土交通省の手引き作成時点では存在しないとされています。実務上は協定書で車両利用を承諾していることから「許諾被保険者」として相手の任意保険を使う形になりますが、自社運転者従業員限定特約が付いている場合は対象外となる可能性があります。事前に損保会社を交えて協議してください。

 

  1. 中継拠点はどう選べばよいですか。 A. 距離の中間ではなく、運行時間の中間で考えることが推奨されています。積雪の有無など道路事情によって所要時間が大きく変わるためです。あわせて、女性用トイレやシャワー等の休憩設備の有無も重要な選定要因です。

 

関連用語

参考・出典

 

※本記事は2026年7月時点の情報です。保険の取扱いや支援制度の内容は変わる場合があります。導入前に所轄の運輸支局および加入している損害保険会社にご確認ください。

 

 

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